5000Hit寄贈レポート「忍術教室潜入報告書」

このレポートは八極が体験した事に基づいて作成されたP−File外伝です。
いやーフィクションですと言えたらどんなに良いか。

そう、思い返せば3年前…1997年にあの恐るべき悪夢とのコンタクトを果たしのだった。
全ては郵便受けに入っていた1通のチラシから始まった…
その日は既に期末試験も終了し、暇だった私は友人達との待ち合わせ場所に出かける前に
郵便受けをチェックし、妙なチラシが入っているのを発見した。
三つ折りにされたパンフレットで正面にはでかでかと墨の字も鮮やかに「NINJYUTU」と記載され、
写真には黒ずくめのおっさんが右手に刀(木刀)を構えて1本足で立っている、シュールというか
製作サイドの神経を疑うような構図で写っていた。
普通の人間なら「なんでローマ字やねん。」等と適当に突っ込みつつ、ゴミ箱に叩き込むのが
正しい判断なのだが、如何せんその時の私は猛烈にヒマだったので(友達に見せれば受けるな)等と
軽い気持ちでそれを鞄に入れ、待ち合わせ場所に移動したのだった。
今思い返せば、そもそもこれが最初の間違いだったんだけど、今更手遅れだし。

1日目
その日我々は何故か1つのビルの前に立っていた。ビルの3階には「NINJYUTU」の看板が…
(またローマ字だし)。
何でこんな事になったかと言うと、昨日友人達にあのイカレたパンフレットを持っていくと全員に
大受けしたまでは良かったんだけど、1人が「無料体験レッスン」等という余計な項目を発見してしまい、
その場のノリで、だったら明日行ってみようなんて事態になだれ込んでしまったのだ。
さて、何時までも突っ立ていてもしょうがないので、取り合えずは入って見る事にする。
(個人的には嫌な予感が火災報知器のように鳴りっぱなしだったので猛烈に帰りたかったのだが…)
忍術教室の中は意外と広く、更に意外なことにそこそこの人もいた。但し、全員ジャージかなんかを
着込んで怪奇な踊りに興じていた。メンツを見ても流石にアジア人でやって来たような物好き(暇人)は
我々だけみたいだけど。
正面の掛け軸にはまたも墨の字も鮮やかに(ただしヘタクソ)「忍術」の2文字。
「おおーっ!今度は漢字やん。」とかなり妙な感心をしてしまふ。周りの壁には陳列ケースだか
なんだかに収められた武具の数々…が、「手裏剣」、「犀」ならいざ知らず「折り紙」、「家紋入り提灯」の
忍者とは一切関連性のない存在が、折角の教室をただの怪しい日本マニアの部屋にしてるし。
好き勝手な批評(突っ込み)を入れていたら、先生なのか怪しい黒ずくめのおっさんが近づいてくる。
しかし、彼はどー見ても西洋人。
やっぱり、ただの金持ってる変態日本マニアの道楽か?相当に失礼な事を内心で思いながら
挨拶を交わす。
しかし、最初のに抱いたインスピレーションに間違いはなかったようで、聞けば聞くほどこのおっさんの
話は嘘臭かった。
彼のインチキ臭い話を総合すると、彼の名前はブライト・マクレガ−(以降ブライト)。20年程前に忍者に
憧れ来日。
色々日本を廻った挙句、「戸賀火」流なる忍術に出会い弟子入り。8年ほど修行だか何だかに明け暮れ、
見事(?)免許皆伝。
残りの期間は日本で働いていたのだが、故郷にも忍術を広めようなどいうひたすら迷惑な使命感に燃え
帰国。教室を開き現在にいたる、と。
「戸賀火流って何?聞いたことないって!」とか「そもそも8年でマスター出来んのか?」とか突込み所は
満載だけど、ブライトのオッサン「忍者は秘密の存在」とか、わけ分かんない事言って煙に巻くし
(忍法ばっくれの術:命名者八極)。
何か、こんな所に長居したら悪の下忍とかに改造されそうだったので、お互いにアイコンタクトを交わし、
適当な所で離脱を図ろうとすると、ブライトが明るい声で「折角来たんだから、ちょっと練習して行きなさい。」
言っていることは普通だが、その調子に西洋人特有の押しの強さが不必要なまでに滲みまくっている。
結局、押し切られた我々は「分身の術」の練習をさせられる羽目に・・・
まず最初に彼が手本を披露してくれたのだが、流石に忍者と言い張るだけあって気合が違う。
けど、確かにスピードは速いけど、どう見たって「反復横飛び」をしてるとしか思えんし・・・
しかも両手を振り上げたり、下ろしたりしながら移動しているので傍から見ているとカニの求愛の踊りに
しか見えんし。
因みに先述のジャージ軍団がやっていたのもコレ。
傷む頭を抑えながら、どうやって逃げるかを算段しているとブライトの無情な声「さあ、今度は君達の番。」
…やれというのか…カニの求愛ダンスを……
さっきまでカニダンスに没頭していた筈の練習生軍も見学に集まってくるし。
状況的にとてもじゃないけど「NO」とは言えん。
結局、運良く捻挫をしていた私(実はっとくに完治してたけど、この非常事態にそんな正直者はなれません)
以外の友人達が強制チャレンジ。
「覚えてろよ!」「次はお前も参加だからな!」友人達の暖かい呪詛の言葉を聞きながら、念のために
湿布を貼って来ていた自分を誉めてあげた一瞬。
拷問にも等しい嫌がらせから解放された我々はその場を逃げ出しました。
「好奇心猫をも殺す」分かりきっていた筈の言葉を身を持って実感した1日でした…


2日目
2度と行かない筈だったのですが、愚か者が学生証を落としたので取りに行くために再び訪れる羽目に。
しかしこっちもかなり長いので今回はパスさせてもらいます。


2日目で完全に恐れをなした私は、それから傍も近寄らないようにしていたのですが、
3ヶ月くらいしてから何の気なしに前を通りかかると、そこに在った筈の「NINJYUTU」の看板は外れ、
替わりに「中國式指圧術」の看板が。
流石、「戸賀火流」ブライト。己の道場まで隠してしまうとは、などと心にもない事を思いつつ、
第2第3のブライトが再び現れないことを祈りながら、その場を後にしたのです。

追記。
先月、日本から送ってもらった雑誌をみていると、通信講座の宣伝でとんでもないのを発見。
「現代超忍法」…やはり奴は滅んでなかった…

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